鮮やかに危機を回避
前回は、曹操を暗殺する計画が持ち上がり、劉備も計画に誘われた……というところまでお話ししました。
そして劉備はその誘いに乗って、計画の同志となったのです。
大望を抱く劉備は、ハナから曹操のもとで一生を終える気はありませんでした。
とはいえ、彼にとって曹操は窮地を救ってくれた恩人であり、下にも置かぬ厚遇を受けてきたのも事実です。
曹操と表立って対立していない劉備が、なぜ暗殺計画などという物騒な話に首を突っ込んだのでしょうか?
背景には、劉備と曹操の「価値観の違い」があるのだと思います。
前回で詳しく述べましたが、劉備と曹操は出自はもちろん、歩んできた人生がまるで違うため、価値観がどうしても合わない面があったと考えられるのです。
真逆の価値観を持つ曹操が、皇帝を保護して最高権力者となり、政治を好きなように操る―――この現実に、劉備は耐え難いものを感じていたのかもしれません(そうした切実な想いがない限り、危ない計画に参加する理由がないのです)。
こうして暗殺計画の同志となった劉備ですが、驚くべき行動に出ます。
なんと自ら志願して、都を離れてしまったのです。
ちょうどこのとき、曹操は敵対勢力を攻撃することになったのですが、劉備は曹操に申し出て遠征軍に加わりました。
曹操を暗殺するには、当然ながら都にいて機会をうかがう必要があります。
ところが劉備は、暗殺計画に加わっておきながら、あえて自ら逃げ出してしまったのです。
これは乱世を生き延びた劉備ならではの、高度な危機管理だったのでしょう。
劉備は曹操暗殺そのものには賛成したものの、計画が失敗すれば一族もろとも皆殺しになってしまいます。
曹操と接する機会が多かった劉備は、その鋭い知性を目の当たりにし、暗殺計画の失敗を予感したのでしょう。
だからこそ曹操の軍事ミッションに参加する形で、都から逃げ出したのです。
事実、暗殺計画は失敗し、劉備の同志たちはことごとく曹操に捕らえられ、処刑されてしまいました。
劉備はあまり戦いが強くないと思われがちですが、的確な判断で危機一髪、難を逃れたわけです。
戦場をくぐり抜けてきた男だけあって、いざという時の判断力はさすがですね。
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エリートのネットワーク
こうして曹操のもとから逃げ出した劉備の人生は、目まぐるしく動きだしました。
都から離れ、一時は独立する姿勢を見せるも、曹操自ら率いる遠征軍に破れます。
こうして劉備は、またしても流浪の人生に逆戻りしてしまったのです。
この後、家族や家臣たちとはぐれるなどの苦難を味わいますが、曹操の勢力圏から南に離れた荊州(けいしゅう/注)という地域のトップに身を寄せ、ひとまず落ち着くことができました。
(注)荊州……現在の中国・湖北省一帯にまたがる地域。後漢末の時代、中国の北方で戦乱が続いたため、多くの人が比較的平和な荊州に逃れてきた。そのため産業や文化が栄えたとされる。
ようやくひと息つけた劉備ですが、おそらく自分がなぜ曹操に勝てないのかを、彼なりに熟考したことでしょう。
曹操は個人の才覚が並外れているのはもちろん、当時の中国のエリート層の支持をしっかり固めていました。
エリートとの接点にとぼしい劉備には、「人脈のハンデ」が大きく立ちはだかっていたのです。
しかし、これだけ負け続けた劉備を、天はまだ見放してはいませんでした。
なぜなら、彼が逃げ込んだ荊州には、彼の弱点である「エリート人脈」が豊富に眠っていたからです。
当時の中国は北部(黄河流域など)が中心でしたが、曹操や呂布をふくむ多くの群雄が戦ったために、荒れ果ててしまいました。
そのため多くの人が戦乱を避けて、南の荊州に逃げてきたのです。
その中には、名声や社会的影響力のある「エリート」も、多くふくまれていました。
彼らは知識人のサロンというべき集まりを形成していたので、荊州はいわばエリートのネットワークが存在したわけです。
さらに劉備の後押しとなったのは、その荊州エリートのなかには反曹操派の人物もそれなりにいたことです。
来るべき曹操との戦いに向け、劉備は彼らの力をなんとしても借りたいところでした。
諸葛孔明との出会い―――恋人・逆位置
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そんな荊州エリートのなかに、劉備の運命を変える大人物がいました。
その男こそ……あの諸葛孔明(諸葛亮)だったのです。
劉備にとって、孔明はどのような存在だったのか……。
タロットに尋ねたところ、導かれたのは……「恋人」の逆位置でした。
えええええっ!
筆者は非常に困惑いたしました。
孔明に関してこのカードが導かれることは、それだけ信じがたいことだからです。
なにしろ恋人の逆位置は、「誘惑」「不倫」そして「不道徳」といった内容を暗示しています。
私たちが孔明に抱くイメージとは、あまりにもかけ離れているからです。
しかし……筆者は思い直しました。
劉備と孔明の関係性には、恋人の逆位置に象徴されるような面も、あるいはあったのではないか―――
そう考えるようになったのです。
次回は、運命の出会いを果たしたふたりの関係を、タロットからじっくり読み解いてまいります。
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