不安定な天候が続き、日差しの強さよりも湿度の高さ、日照時間の短さに着目されることの多い梅雨。
そんなさなかにやってくるのが、「夏至(げし)」の季節です。
この季節にぴったりの、暮らしの知恵、季節の神事についてもまとめましたので、ぜひお読みくださいね。
夏至とは
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皆さんが頭に描く夏至は、「夏至日(げしび)」を表すことが多く、一年で最も日が長く、夜が短い日を指しています。
一方で、二十四節気における「夏至」は、6月21日~7月6日頃を指し、ここから暑さが次第に増し、夏の盛りへと向かう頃のことを表しています。
梅雨の只中ではありますが、陽の気が極まり、夏至日を境に少しずつ、冬至に向かって日が短くなり、陰の気が増えていく転換点となっています。
夏至の三候
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それぞれの二十四節気は、七十二候と呼ばれる三つの候から構成されています。
七十二候では、二十四節気よりもさらに細かく、5日ほどの季節の移ろいを表しています。
初候:乃東枯(なつかれくさかるる)
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6月21日~6月25日頃の候です。
二十四節気「冬至」の初候には「乃東生(なつかれくさしょうず)」とあるのですが、冬至の頃に芽を出すウツボグサが、紫色の花穂を咲かせる時期。
多くの生命が盛りに向かう真夏に、すっかり色褪せ、枯れたように見えるこの植物は、「夏枯草(カゴソウ)」とも呼ばれることから、このような七十二候が生まれたようです。
生薬としてもよく知られ、利尿・消炎作用があり、飲み薬や塗り薬、うがい薬などとして親しまれていたそう。
英語名「all-heal(すべてを癒す)」が、その素晴らしい効能を端的に物語ってくれています。
次候:菖蒲華(あやめはなさく)
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6月26日~6月30日頃の候です。
アヤメが花を咲かせる時期になりました。
昔はアヤメが咲くと梅雨入りの目安と言われましたが、少しずつ気候が変わってきているため、近年では梅雨のさなかに咲き始める印象をお持ちの方もおられるでしょう。
「菖蒲」はショウブとも読めるため、端午の節句に「菖蒲湯」として親しまれる植物と同一視されることがありますが、ショウブの花は地味な色をしており、アヤメとは異なります。
前候のウツボグサもそうですが、アヤメも紫色の美しい花を持ち、この季節はほかにも青や紫の花々が目を潤してくれます。
じめじめと気分の晴れない日が続くこともありますが、雨上がりに散歩に出かければ、美しい宝石のような草花が目に鮮やかな季節でもあるのではないでしょうか。
末候:半夏生(はんげしょうず)
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7月1日~7月6日頃の候です。
半夏とは、カラスビシャクという薬草のこと。
この植物が生える頃は、田植えを終わらせる節目とも言われています。
半夏生の期間を超えて田植えをすると収穫が減ると考えられていて、「半夏半作」という言葉もあるほど、農家にとって大切な節目でした。
田植えが終わると一旦お休みを取り、その後の農事に精を出す。
そんな暮らしぶりが暦から見て取れるように感じられます。
ちなみに、「半夏生(ハンゲショウ)」という植物もありますが、「半夏(カラスビシャク)」とは全くの別物です。
「半夏生」の頃に花を咲かせるのがハンゲショウ。
葉の半分が白く染まるこの不思議な植物を一目見れば、「半化粧」と書きたくなる気持ちも分かります。
暮らしの知恵
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晴耕雨読という言葉があります。
晴れた日には畑を耕し、雨の日には家で読書に興じる。
俗世間を離れ、心穏やかに過ごす文人の生き方を表す言葉ですが、ここから学べることは多くあります。
現在は天気にかかわらず出かけなければならなかったり、せっかくの休みに雨が降ると洗濯物が乾かず憂うつな気持ちになったりすることも多いですが、天気は人間が逆らうことのできないものです。
雨が降ったからといって怒ったりガッカリしたりしていては疲れてしまいますよね。
晴耕雨読と調べると、「悠々自適な暮らし」という意味が出てくることがありますが、どんなにお金や時間に余裕のある人であっても、どうにもならないのが天候であると考えてみてください。
晴れた日には耕し、雨の日には読む。
天候に逆らわず、その時々にできる精一杯を生きることが、気持ちよく暮らす知恵なのではないでしょうか。
雨の多い季節、できることは限られていると考えるか、今だからこそできることもあると考えるか。
思考の切り替えが、いつもにも増して生活を豊かにしてくれる季節になりそうです。
季節の神事
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元日に始まった一年は、6月末日で折り返しとなります。
6月30日には、各地の神社で「夏越の大祓(なごしのおおはらえ)」と呼ばれる神事が行われています。
大きな輪の形に結い上げた茅(チガヤ)をくぐる、「茅の輪くぐり」の神事をはじめ、半年間の間に心身に積もったツミ・ケガレを祓うのが、夏越の大祓。
当日参加が難しい場合でも、設置された茅の輪を自由にくぐれたり、ツミ・ケガレを移すための人形(ひとがた)が用意されていることも多いので、ぜひお近くの神社に参詣に出かけてみてください。
梅雨の時期、しっとりとした草花が爽やかに輝く様子も見られそう。
不要な感情や邪気を祓えば、サッパリとした気持ちで下半期を迎えられるでしょう。
まとめ
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今回は二十四節気の夏至にあたる3つの候をご紹介しました。
上半期の終わり、下半期の始まりにまたがる夏至の頃は、ぐずついた天気の続く梅雨の真っ最中。
晴れ間が短いからこそ、極まる陽の気がありがたく感じられそうです。
その時々にあるもの、与えられたものを尊べば、いつもよりも喜びの多い梅雨を過ごすことができるのではないでしょうか。