夏真っ盛りに思えるこの頃ですが、暦の上ではもう、秋が始まりを告げています。
今回は、二十四節気の「立秋(りっしゅう)」と、その期間に含まれる三つの七十二候についてまとめました。
さらに、季節のお話、季節の薬膳を紹介していますので、参考になりましたら幸いです。
立秋とは
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立春に始まる二十四節気は、第13節目を迎え、これにて一年は折り返しとなります。
そんな立秋は、夏至と秋分の中間の頃。
期間としては、8月7日~8月22日頃を指しています。
真夏とは思っていても、夕方にひゅっと涼しい風が吹いたり、夜の匂いの中にふと秋を感じたりすることもあるでしょう。
あまりの暑さに早く過ぎ去ってほしいと思う日もある夏ですが、秋の訪れにもの寂しさを感じるたび、人間らしい矛盾を覚える方もいるかもしれません。
立秋の三候
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それでは立秋に含まれる七十二候の三候を見ていきましょう。
七十二候では、およそ5日ごとの非常に細やかな季節の移ろいを感じ取ることができます。
初候:涼風至(すずかぜいたる)
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8月7日~8月11日頃の候です。
夕暮れ時に頬を撫でる涼しい風に、秋の気配を感じる、そんな季節を表した七十二候になっています。
肌感覚として、お盆を過ぎると秋めいてくると感じる人は多いかもしれませんが、俳句の世界では、お盆に関する言葉はどれも初秋の季語とされています。
昼間の強い日差しを見ると、秋とは思えない。
そう思う方も多いでしょうが、雲の形、聞こえてくる虫の声、星の輝き方など、そこここに秋の兆しを感じ始めるのがこの「涼風至」という季節です。
窓に風鈴を吊したり、夕涼みの散歩に出かけたりして、風に秋を感じてみてはいかがでしょうか。
次候:寒蝉鳴(ひぐらしなく)
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8月12日~8月16日頃の候です。
カナカナカナ……という特徴的な声で鳴くヒグラシ。
夕暮れに響くその声音は、過ぎゆく夏を惜しむように、少し寂しげにも聞こえます。
蝉の大合唱にうんざりするような気持ちになる方もいるかもしれませんが、ジリジリと、熱した油のような鳴き声のアブラゼミ、猛暑を象徴するミンミンゼミやクマゼミ、そして夏の峠を越えると鳴き出すツクツクボウシと、その声に季節の移ろいを感じる方もまた、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
初秋を連想させるツクツクボウシとヒグラシは、どちらも寒蝉と呼ばれますが、七十二候ではここに「ヒグラシ」と読みを付けました。
耳に残る余韻を持つ、カナカナカナ……の声は、人々の名残惜しさを代弁してくれているようでもあります。
末候:蒙霧升降(ふかききりまとう)
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8月17日~8月22日頃の候です。
蒙霧とは、もうもうと立ちこめる深い霧、濃霧を指す言葉です。
霧は、条件さえ整えば季節を問わず発生するのですが、単に「霧」という時には、季節は「秋」となっています。
梅雨時の霧は「梅雨霧」、夏の霧は「夏霧」と、呼び名が変わるのが風流ですね。
さらに春の霧は「霞」と呼ぶのも、日本語の面白みです。
このことについては、「暦に沿う暮らし②雨水」の記事で、次候「霞始靆(かすみはじめてたなびく)」に書いていますので、興味のある方はぜひこちらもお読みくださいね。
季節の言葉
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山歩きをしている時、雨が降ってきたので木の下で雨宿りをしようと思うと、かえって激しく降っているということがあります。
これは「樹雨(きさめ)」という現象で、葉や枝に付いて次第に大きくなった霧の粒が、滴となって落ちることを言います。
雨が降っていない時でも、霧の濃い林の中などで出会うことがあり、大量に降る時には雨にも似た音で水滴が落ちることもあるそう。
これを「樹の雨」と表現したところに、日本人らしい自然への眼差しを感じます。
都会ではなかなか見られなくなった霧を味わいに、初秋は山間部へとお出かけして、涼を取ってみてはいかがでしょうか。
季節の薬膳
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夏バテになるまいと、あえて精の付く食材を選びがちな夏。
ですが、そのせいでかえって胃腸を弱らせ、エネルギー不足を招いてしまうことがあります。
そんな時には一旦、そばを食べて消化器系を休ませてあげましょう。
お盆の帰省で宴会続きになり、顔や体のむくみが気になるという方にもおすすめです。
体に熱がこもっている感覚があるなら、ざるそばに刻みのりを載せて。
逆に体の冷えが気になるタイプの方は、薬味を一緒に食べるようにしましょう。
他にも、トマトは体の熱を取り、胃腸を整えてくれる旬食材です。
皮にハリがあり、ヘタが緑色でピンと反っている新鮮なものを選ぶと良いでしょう。
冷えが気になる方は、トマトも熱を通して食べるのがとくにおすすめ。
卵と一緒に炒めたり、ミネストローネのようなスープにして食べるのも良いですね。
まとめ
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今回は二十四節気の立秋にあたる3つの候をご紹介しました。
風に霧と、大気の動きにも季節の変わり目を感じる立秋の頃。
夏至を境に徐々に日も短くなり、その分だけ星の瞬きがくっきりと見えるようになってきています。
とはいえ、日中は酷暑続きですから、くれぐれも熱中症に注意してお過ごしくださいね。
夏は来年もまたやってきますが、その時にはもう、今年の夏とは、自分も世界も移ろっているでしょう。
今この時を大切に生きることが、暦に沿うということの、一つの意味なのかもしれません。