立春からスタートした「春」が終わり、「夏」がやってきました。
環境負荷のかからない生活が求められる今ですが、昔から変わらず咲く花、鳴く鳥、泳ぐ魚がいます。
人間だけでなく、多くの生物とともに生きている私たち。
いつまでも美しい自然を感じながら生きていくことができれば、こんなに嬉しいことはありませんね。
今回は、「夏」の始まりを知らせる「立夏」という季節について紹介します。
また、季節の薬膳・季節の神事についてもピックアップしました。
暦に沿った暮らしで、無理なく心身を整えていきましょう。
立夏とは
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二十四節気の第7節目にあたる「立夏」は、春分と夏至の中間。
夏の気配が立ち上ってくる頃を指しています。
新緑が目に優しく、地域によっては麦が穂を出し始めたり、大豆の種まきが始まる頃。
爽やかな風が吹き、暑すぎず寒すぎず、過ごしやすい日が続く季節となります。
陽のエネルギーが満ち満ちていくこの時期は、心身共にハツラツとした状態で過ごせる方も多いでしょう。
立夏の三候
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夏になり、春とはまた趣の違う七十二候が訪れます。
約5日ごとの細やかな季節の中に、変わりゆくものの喜びを感じられそうですね。
初候:蛙始鳴(かわずはじめてなく)
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5月5日~5月9日頃の候です。
春先に目覚めた蛙が田んぼの中を泳ぎ、鳴き始める頃になりました。
この鳴き声は、オスからメスへの求愛の声とよく言われますが、実はそれ以外にも、警戒を呼びかける声や、ほかのオスに自分の縄張りを示すための声などがあるそう。
「かえる」という音から、「無事かえる」「お金がかえる」に通ずるとされていますが、これは蛙という生物が、最後には生まれた場所に戻ってくるという習性に由来しています。
田舎の夜は蛙の大合唱となり、うるさいくらい!と思う方もいるでしょうが、縁起の良い「かえる」の鳴き声に、時には耳を傾けてみるのも良いかもしれません。
次候:蚯蚓出(みみずいずる)
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5月10日~5月14日頃の候です。
多くの虫たちは「啓蟄(けいちつ)」の頃に出てきますが、ゆっくりと起き出すミミズは、夏の始まるこの頃に、ようやく冬眠を終え、地上に出てきます。
日本では「自然の鍬(くわ)」、英語では「earth worm=地球の虫」と呼ばれるミミズは、田畑を耕し、栄養豊富な土を作ってくれる、力強い存在。
ダーウィンは40年という歳月をかけてミミズの研究をしていたと言われ、アリストテレスもミミズを「大地の腸」と名付けたという話も残っているほど、ミミズという小さな生き物の、大きな功績は世界中で認められています。
たっぷりとした睡眠は、大きな役割を担うために必要なのかもしれませんね。
末候:竹笋生(たけのこしょうず)
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5月15日~5月19日頃の候です。
タケノコにも様々な種類がありますが、現在、日本で最も出回っているのは、中国が原産地の「孟宗竹(もうそうちく)」という品種。
こちらは春先、3月中旬頃に旬を迎えます。
一方、日本が原産となる「真竹(まだけ)」は、5月~6月にかけて旬を迎えます。
漢字では「筍(=竹冠に旬)」とも書くタケノコ。
春の旬野菜として知られている食材ですが、実は初夏まで楽しめる、嬉しい食材です。
芽が出始めてからの伸びるスピードがとても速く、「すくすく育つ」ことから、縁起物としても好まれてきました。
薬膳ではむくみ取りや不眠の解消にも良いとされている食材ですので、ぜひ召し上がってみてくださいね。
季節の薬膳
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3月には旧年度が終わり、4月から新生活が始まりました。
連休から始まる5月・立夏は、変化の激しかった春の疲れを癒やすのにぴったりの季節。
一方で、生活リズムの崩れがちな連休で、心身のバランスを乱し、五月病のような症状が出てしまう方も多いかもしれません。
お出かけで体が疲れたと感じるときには「腎」の働きを高める食材がおすすめ。
ニラ・長いも・ブロッコリー・エビなどが含まれます。
胃腸の不調があるときは、絹さややスナップエンドウを食べて労りましょう。
憂うつ感が強く、五月病が疑われるときには牡蠣を取り入れて。
フライではなく、牡蠣ご飯や煮物でいただくことで、体に負担をかけることなく、心の安定を図ることができます。
物価が高く、食材選びも消極的になりがちな昨今ですが、薬膳を取り入れたり、時には「食べたい!」という気持ちを重視して、心身の喜びを感じることも大切ではないでしょうか。
季節の神事
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5月1日から主な前儀の始まる京都・葵祭は、5月の風物詩です。
約1500年前に行われた、五穀豊穣を祈願する祭祀が起源となっている葵祭の一番の見所は、雅な平安装束を纏った、総勢500余名の行列。
京都御所から下鴨神社を経て、上賀茂神社までを練り歩く「路頭の儀」と呼ばれる祭祀です。
新型コロナウイルス感染症の流行により中止されていた行列ですが、令和5年の葵祭では、基本的な感染症対策をしたうえで、4年ぶりの斎行となります。
そんな路頭の儀の開催日は、5月15日(雨天時は翌16日に順延)。
4年ぶりということで、観覧の人出も増えそうですが、路頭の儀までにも様々な神事が行われていますので、京都観光と併せて楽しむのも良さそうですね。
まとめ
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今回は二十四節気の立夏にあたる3つの候をご紹介しました。
盛夏に向けて陽の気がグングンと高まるこの季節。
動きやすくなり、動きたい欲が強まるからこそ、落ち着く時間を忘れず、心身のバランスを保つことが重要になりそうです。
生活にメリハリを付けて楽しめば、夏に向かって、さらに陽気が心身に満ちていくでしょう。