「根無し草」の悲哀
前回の記事で「光秀の若き日々」を占ったところ、星の逆位置が現れました。
そのお話の続きからしていきましょう。
先にも述べたように、星の逆位置は「失望」「壁」あるいは「高望み」「挫折」といった内容を示します。
そして同時に、「断絶」と読み解くことも可能でしょう。
星のカードは星の輝きを象徴しているため、逆位置ではその光が途絶えてしまうことになります。
つまり、若き日の光秀は、人生における大切なものと「断絶」させられていたとも言えるのです。
では、光秀は何と断絶されていたのでしょうか?
星の逆位置が暗示しているのは、おそらく「故郷や一族との断絶」だと考えられます。
光秀の故郷は美濃(今の岐阜県の一部)ですが、明智氏は内紛に巻き込まれ、一族の多くが滅ぼされてしまいました。
当然ながら領地も失ってしまったため、光秀は故郷とのつながりをも絶たれてしまったのです。
これは若き日の光秀が、大きなハンデを背負ってしまったことを意味しています。
戦国武将にとって、経済力の元となる土地と、力を貸してくれる一族の存在は、いずれも欠かせないものでした。
ところが光秀は、若くしてこの両者を失ってしまったのです。
先祖代々の領地を失い、頼りになる一族もほとんどいなくなった……これは大きな痛手だったはずです。
こうしたハンデを背負ったまま、光秀は越前(福井県)の朝倉氏に仕えますが、新天地での出世レースでも不利になったのは否めないでしょう。
光秀が美濃の内乱で失ったものは、あまりに大きかったのです。
星の逆位置は、土地も一族も失った「根無し草」の悲哀を示しているのだと思います。
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義昭と信長の縁をつなぐ―――力・逆位置
不遇の日々を送ってきた光秀ですが、ある出来事から運命が大きく開けます。それは、室町幕府の将軍候補・足利義昭との出会いでした。
そもそも、京都で将軍になるべき義昭が、いったい越前の朝倉氏のところへ何をしに来たのでしょうか?
その背景を簡単におさらいしておきましょう。
本来は武士のトップであるはずの室町幕府ですが、当時はすっかり勢力が弱くなり、有力者たちに好き勝手に操られている状態でした。
そのため、足利家の正当な血筋である義昭も、有力者にはばまれて将軍になれずにいたのです。
あきらめ切れない義昭は、有力な大名の力を借りて京都に上り、将軍の位に就こうとしました。
このとき白羽の矢が立ったのが、越前の朝倉氏だったのです。
こうして、朝倉家臣である光秀もまた、義昭との接点を持つこととなりました。
それでは、肝心の朝倉氏はどう動いたのでしょうか?
結論から言うと、義昭の望み通りに兵を出すことはありませんでした。
朝倉氏の勢力であれば、義昭を奉じて京都に上ることは可能だったでしょう。
しかし上洛(じょうらく/注)はコストがかかるうえ、新たに敵を作るリスクも大きいため、積極的にはなれなかったのだと思われます。
(注)上洛……京都へ上ること。
この状況下で、大きな仕事をしたのが光秀です。
朝倉氏に見切りをつけ、尾張(今の愛知県西部)の織田信長を頼るべきだとし、信長との交渉を担当することになったのです。
光秀は、この大役を見事にこなしました。
彼の尽力によって義昭と信長の交渉は成立し、義昭は信長の元に身を寄せることになります。
そして1568年、ついに信長は京都に上り、義昭を将軍の位につけることに成功しました。
義昭は念願の将軍の座を手に入れ、信長は戦国大名の第一人者としての地位を確立したのです。
それでは話を戻し、この時期の光秀の意識について、タロットで探ってみましょう。
カードを切ったところ……「力」の逆位置が現れました。
これは「意志の弱さ」を象徴しています。
一見すると、ちょっと不可解な暗示にも思えますね。
光秀はこの大仕事を見事に成し遂げ、義昭と信長の縁をつなぐことに成功しています。
信長が義昭を奉じて京都に入ったことで、歴史は大きく動きました。
その縁の下の力持ちとなったのが、光秀だったわけです。
「天下人」に仕えるということ
出典:ashinari.com
大仕事を成し遂げた光秀の、どこに「意志の弱さ」があったというのでしょうか?
思うに、ここでの弱さとは「信長と比べたときの弱さ」を示しているのではないでしょうか。
天下に手を伸ばすだけあって、信長という人はとてつもない人です。
その強大な精神力は、常人の計り知れるものではなかったことでしょう。
いかに光秀が才能あふれる武将でも、信長の「意志の力」「内面的エネルギー」には、到底かなわないはずです。
光秀は信長と会い、その巨大な精神エネルギーの凄まじさに触れたのでしょう。
そして聡明な彼は、心の奥底でこう感じたのかもしれません。
信長の意思のエネルギーには、決して勝てない―――
もちろん光秀はこの後、信長の武将となり、信長の指揮下で存分に働くこととなります。
しかしふたりは結局、本能寺で悲劇的な破局を迎えました。
その背景には、秀才・光秀が、超人・信長の「意志の力」についていけなくなったことが、あるのかもしれません。
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