呂布の命ごい
曹操に破れ、部下の裏切りで万事休した呂布。
三国志最強の武将とはいえ、縛られてしまってはなにもできません。
曹操の前に引きずり出された彼は、宿敵に向かって訴えます。
「縛り方がきつい。縄をゆるめてくれ」
これに対する曹操の答えが、またふるっています。
「虎を縛るのだから、きつく縛って当たり前だろう」
この問答からして、やはり曹操の側が一枚上手だったように思えます。
もはや死刑執行を待つしかなくなった呂布。
いや……この男は、そう大人しく処刑される人物ではありませんでした。
彼は因縁の相手である曹操に、驚くべき提案をします。
「私に騎馬隊を率いさせてくれ。そうすれば、天下は容易に平定できる」
なんと、血みどろの戦いを繰り広げた曹操に対し、自分を武将として用いるよう求めたのです。
どこまでも自信家というべきか、面の皮が厚いというべきか……ちょっと常人には理解しがたい感覚でありますね。
しかもこのとんでもない申し出に対し、曹操は困惑したといいます。
因縁の相手とはいえ、曹操にとっても呂布の強さは魅力的だったのでしょう。
上手く使いこなせば、たしかに曹操の天下は近づくかもしれないわけです。
ところがここで、呂布の処遇に迷う曹操に、劉備が意見しました。
「呂布がこれまで、何度も主人を裏切ってきたことをお忘れですか?」
そう。劉備は曹操に対し、「呂布は生かしておけば、またあなたを裏切る」と忠告したのです。
劉備の言葉で腹を決めた曹操は、ついに宿敵・呂布を処刑しました。
呂布は死刑執行を前に、劉備をこう罵ったといいます。
「この男こそが、もっとも信用がならないのだぞ!」
呂布の叫びは、曹操と劉備の未来を暗示していたのかもしれません。
たしかに劉備は、人の下で終わる男ではなかったのです。
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曹操は劉備を評価したが……
呂布というとんでもないキャラのおかげで、ずいぶん寄り道してしまいましたが……
あらためて三国志の核心ともいうべき、劉備と曹操の関係をじっくり見ていきましょう。
ふたりの本格的な交わりは、劉備が呂布に領土を乗っ取られ、曹操を頼ってきたことからはじまります。
後にライバルとしてしのぎを削ることになる両者ですが、このとき曹操は行き場をなくした劉備を迎え入れたうえ、その人間的魅力を評価して、厚遇したといいます。
曹操によって劉備は引き立てられ、左将軍というなかなか立派な位まで授かっています。
思うに曹操は、劉備の人物に見所があると判断し、自分の部下として用いようとしていたのかもしれません。
劉備と曹操の関係を表す、興味深い逸話があります。
曹操は劉備を非常に気に入り、よく食事をともにしたといいます。
あるとき、曹操は歓談のなかで劉備に言いました。
「この世で英雄と呼べる者は、貴君と余のふたりだけだろう」
なかなかに意味深なセリフです。
そもそも劉備は呂布によって領土を追われ、曹操のところへ逃げ込んできた男です。
そんな人物に対しては、過大なほめ言葉とも思えます。
しかしこの曹操の賞賛に、劉備は返って動揺しました。
そうして思わず手にしていた箸(はし)を落としてしまったといいます。
なぜ、最上級のほめ言葉に劉備は動揺したのか?
おそらくは、曹操に自分の本当の姿を知られたくなかったからでしょう。
劉備は大きな志を抱く男であり、晩年に自分の国を建国するほどの人物でした。
苦境にあって曹操を頼りはしたものの、いつまでもその下についている気はなかったと思われます。
よって、下手に曹操に見込まれ、曹操軍団の中に取り込まれてしまうことは、劉備の望むところではなかったのでしょう。
劉備は曹操の前で自分の正体を隠し、才覚や大志を悟られないよう、注意深く振舞っていたと推察されます。
にもかかわらず、曹操は劉備を「自分に匹敵する英雄」とほめちぎりました。
たとえ正体を隠していても、曹操の目はごまかせない―――このとき劉備は、曹操の鋭い知力に恐れをなしたのかもしれません。
曹操という宿敵―――女帝・正位置
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そもそも劉備にとって、曹操とはいかなる存在だったのでしょうか・
タロットに尋ねたところ、「女帝」の正位置が導かれました。
なんとも意外な暗示ですね。
曹操のイメージからすると、むしろ皇帝や悪魔、死神のカードが出てきそうなものですが……。
しかし、女帝の正位置の意味するところをよく考えれば、劉備の目に曹操がどう映っていたかが見えてくる気がします。
女帝の正位置は「繁栄」を暗示しています。
「才知による成功」「芸術的感性」などの象徴でもあります。
これらの要素はみな、曹操にあって劉備になかったものだったといえます。
「繁栄」「才覚」「芸術」―――この三つに関しては、劉備は逆立ちしても曹操におよびませんでした。
そして劉備自身も、曹操が優越している点について強く意識していたことが、タロットから読み取れます。
劉備は「曹操に勝てない要素」について、いったいどのように考えていたのか?
そして劉備と曹操のライバル関係は、どう展開していくのか?
次回ではそのあたりをじっくり見てまいります。
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