毎年6月と12月の晦日(末日)には、全国各地の神社で大祓という神事が行われています。
今回は、6月に行われる夏越の大祓という神事についてまとめました。
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夏越の大祓とは
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古から日本人はケガレを嫌い、祓いを大事にしてきました。
人の陰口を聞いて耳がケガレる、他人を貶めるようなことを言って口がケガレる、といったように、人は日々、内外からケガレに接してしまい、いつの間にか心身にケガレを積もらせていきます。
ケガレ=ネガティブなものに覆われていると、いつしかネガティブな出来事に見舞われるようになり、災難や厄に遭いやすくなってしまいます。
半年に一度、身も心も祓い清めるための神事が大祓であり、夏越の大祓は、6月30日に行われ、年明けからの半年間に心身に積もったケガレを祓う=手放すための神事です。
神事では、最上級の祓の祝詞(のりと)といわれる「大祓詞(おおはらえのことば)」が読まれ、人形(ひとがた)に個々人のツミ・ケガレを移し、白布を8つに裂いて、魔を切り裂く儀式などが行われます。
また、夏越の大祓に特徴的な神事として、「茅の輪くぐり」と呼ばれるものがあります。
茅の輪くぐりとは
茅(ちがや)を使って作られた大きな輪をくぐる神事を、茅の輪くぐりといいます。
参拝した人がだれでもできるように、6月中旬頃から境内に設置される神社も多く、くぐり方の説明書きをしてあるところもあります。
茅の輪くぐりをすることで、無病息災を祈るという神事ですが、そもそもなぜ、茅の輪くぐり神事が無病息災とつながるようになったのでしょうか?
それには、蘇民将来(そみんしょうらい)の神話が由来しています。
蘇民将来の神話
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神代の時代、ある神様が旅をしておられました。神様は一晩の宿をたずね、巨旦(こたん)将来という人の家に行きました。巨旦将来は裕福な家の人でしたが、「うちは貧しいので泊められません」と言って断りました。
神様は次に、巨旦将来の兄である、蘇民将来の家をたずねました。
蘇民将来は貧しい家の人でしたが、神様を受け入れ、できる限りのもてなしをしました。
数年の月日が経ち、神様はふたたび蘇民将来の家をたずねます。
そして、「もしも天下に疫病が流行るときには、茅(ちがや)を使って輪を作り、それを腰につけておきなさい」と言いました。
やがて疫病が起こり、蘇民将来の家族は忠告どおり、茅の輪を腰につけました。
蘇民将来の家の者はだれも疫病に罹りませんでしたが、巨旦将来の家の者はみな、疫病が原因で死んでしまいました。
神様はみたび蘇民将来を訪れ、自分がスサノオノミコトという神であることを明かし、「今後も疫病が流行るときには、蘇民将来の子孫であることを証明するため、茅の輪を身につけていれば、その家は疫病から逃れることができるだろう」といいました。
この神話がもとで、現在夏越の大祓では茅の輪くぐり神事が行われています。
茅の輪のくぐり方
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茅の輪は8の字を描くように3度くぐる、というのが通例です。
1度目は、正面で礼をし、左足から茅の輪をまたぎ、そのまま左に回って正面へ戻ります。
2度目も正面で礼をし、今度は右足から茅の輪をまたぎ、そのまま右に回って正面へ戻ります。
最後も正面で礼をし、また左足から茅の輪をまたいで、左周りに正面へ戻ります。
そのままもう一度正面で礼をし、左足で茅の輪をまたいでまっすぐ参道を通り、本殿へ参拝しましょう。
左→右→左→左という流れを覚えておけば大丈夫です。
茅の輪くぐりの際の神拝詞(となえことば)
仏教では、仏様ごとで決まっている真言(しんごん)と呼ばれるお参りの際に唱える言葉がありますが、神道でもいくつかの神拝詞と呼ばれる唱え言葉があります。
今回は茅の輪くぐりをしながら詠むと、神様に無病息災の祈りが通じやすくなる神拝詞をご紹介します。
①水無月(みなづき)の 夏越(なごし)の祓(はらえ) する人は 千歳(ちとせ)の命(いのち) 延(の)ぶというなり
②思ふこと みなつきねとて 麻の葉を 切りに切りても 祓へつるかな
③宮川(みやがわ)の 清き流れに 禊(みそぎ)せば いのれることの 叶はぬはなし
これら①~③の神拝詞を、1周目、2周目、3周目と、茅の輪をくぐる前に1つずつ詠む方法が一般的です。
また、「蘇民将来」と唱えながら茅の輪くぐりをしたり、茅の輪を象ったお守りを玄関に飾ったりすることで、自分と自分の家族は蘇民将来の子孫であると示し、疫病除けをする風習も各地で残っています。
神社には電話で連絡をしてから行きましょう!
2020年6月30日、今年も夏越の大祓の時期がやってきました。
しかし、夏越の大祓のために人々が密集し、密接しては元も子もありません。
神社によっては夏越の大祓を行わない、規模縮小するといった決断をされるところもあるかもしれません。
問い合わせのために人が殺到することもやはりよくないでしょう。
神様にお参りするのはとても素晴らしい行いですが、今年のお参りは、神社に電話で問い合わせてからにしたほうが安心です。
神様は、神様のことを思い、祈りの気持ちを向ける人のことを決して忘れません。
家にいても、どこにいても、神様に思いを向けることはできます。その気持ちはかならず神様に通じます。
まとめ
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毎年6月30日は、全国各地の神社で夏越の大祓が行われます。
「大祓詞」という祝詞の奏上や、白布を裂く神事、人形にケガレを移し、祓をする神事など、半年のうちに心身に積もったケガレを徹底的に落とすことができます。
また、疫病除けの神様であるスサノオノミコトと、蘇民将来という人にまつわる神話をもとに、各地の神社で茅の輪くぐりが行われています。
今年は神事の規模を縮小するなど、いつもとちがう予定になっている神社もあるかもしれませんが、半年間のケガレを落とすため、神様に無病息災を祈る時間を取ってみてはいかがでしょうか。